企画展 第16回 熱に耐える粘着テープ展
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近年機器の小型化・高機能化がさらに進み、電子部品の発熱量も大きくなってきました。
これに伴い、部品に使われる粘着テープの耐熱性も注目されています。
そこで今回は数ある粘着テープの中で、主に電気絶縁用粘着テープの耐熱性にスポットを当てて紹介します。
「耐熱性」とは、文字通り熱に耐える性能を指します。
粘着テープが本来持つ性能を高い温度下でどれだけ保持できるかを意味します。
高温環境でも特性が劣化しない性能
熱に耐える=高温の環境下でテープの特性が劣化しないことを指します。
電気絶縁用テープの「特性」はもちろん「絶縁」なので、電気絶縁テープの耐熱性は「その温度環境で主に絶縁性と粘着性を連続維持できる」ということを意味します。
ちなみに、低温でも特性が劣化しない性能は「耐寒性」と言います。
難燃性とは別モノ
耐熱性とよく似た特性で「難燃性」がありますが、実は別モノです。
難燃性は炎にかざしても燃えにくい性能のことを言います。
電子機器では 難燃性を示す規格としてUL規格がよく使われます。
テープの燃焼試験を行う、燃えにくさの規格基準(FR:Flame
Retardant)
・UL510 FR(テープの燃焼試験)
UL規格とは
- UL規格は、アメリカ保険業者安全試験所(Underwriters Laboratories Inc.:UL)が策定する製品安全規格です。
- 材料・装置・部品・道具類などから製品に至るまでの、機能や安全性に関する標準化を目的としています。
- ULは1894年に設立された非営利団体です。火災、盗難その他の事故から、人命・財産を保護するための安全規格開発、研究、試験、検査を行っています。
耐熱温度は「絶縁性と粘着性を連続維持できる温度」
電気絶縁用粘着テープは、長い時間、高温の環境下で使用されるため、「耐熱温度」はその温度環境で連続して、絶縁性と粘着性を維持できる温度のことを言います。
電気製品の絶縁耐久性は、温度、電気、機械的ストレス、振動など、さまざまな要因に影響されます。中でも温度が、絶縁性に対して大きな劣化の要因になります。そこで、電気絶縁用粘着テープも日本工業規格のJIS
C4003に則り、耐熱クラスを区分していました。
電気絶縁用粘着テープの耐熱性は、基材(糊を塗っている支持体)の材質で決められていましたが、基材が本来有する耐熱性とのかい離があるため、近年粘着テープの耐熱性は、製造メーカーがそれぞれ試験を行い決めています。ただ、JIS規格も、参考としては今でも使用されています。
耐熱試験方法
耐熱試験にもたくさんの方法があります。
テストしたいテープの小片を長時間一定温度に保つことができるオーブンに入れます。加熱後、小片を取り出し、劣化を測るために引っ張って強度を調べる「引張強度試験」、ステンレスなどに貼り付けてから、オーブンに投入。取り出した後、数時間冷ましてから引きはがして粘着力を測る「引きはがし粘着力試験」などがあります。
また、電気用品安全法でもシート、フィルム状のものは、引張強さ、伸び、引張衝撃強さ、絶縁耐力を測定するように規定されています。
耐熱のメカニズム
電気絶縁テープの耐熱性はテープの粘着剤を塗る基材(支持体)の分子的特性に由来します。
アセテート、PET(ポリエチレンテレフタレート)
、PPS(ポリフェニレンスルファイド)、アラミド、PI(ポリイミド)は分子構造が輪のような形になっている(環状構造)ので、分子が自由に形を変えられず、柔軟性に由来する物性の変化は難しいです。
分子の鎖に柔軟性のない分子構造が含まれると加熱した時に、分子の動きが制約されます。
そのため、分子の鎖が安定で、切れにくく、熱に対して耐久性を発揮します。
一方、分子構造に輪のような構造が無いポリエチレンやPVCは加熱された時に、分子が動きやすいこと、更に分子の結合エネルギー(粒子が結合しているとき、結合を切って粒子をばらばらにするために必要なエネルギー)が低いので、分子が切れて劣化しやすい特性があります。
尚、環状構造の無い高分子でもPTFEとシリコーンは構成元素の結合エネルギー(C-F結合とSi-O結合)が高いため分子の鎖が切れにくく、熱に対する耐久性が高いです。