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COOメッセージ

成長の成果を持続的な企業価値向上へつなげる

2025年度は、売上収益が1兆円を超え、営業利益や営業利益率も過去最高水準となるなど、着実な成果を積み上げることができました。これは、ニッチトップ戦略を軸とした事業運営と収益力強化に向けた取組みが実を結んだ結果であると考えています。

一方、ROEは目標水準に至らず、利益成長の成果をいかに企業価値向上に結びつけるかという点では、なお課題が残りました。これは、単なる数値上の問題ではなく、成長投資の在り方や資本の使い方、事業ポートフォリオの質を含め、経営として次の段階に進むべきことを示していると受け止めています。

セグメント別に事業を振り返ると、成長が見込まれる領域へ重点的に資源配分を進めた結果、インダストリアルテープやオプトロニクス事業では着実に収益を拡大することができました。一方、ヒューマンライフ事業は、2025年度も引き続き営業損失を計上しましたが、主力事業である核酸医薬の受託製造事業において商用薬案件の受注が始まり、前年度に比べて営業損失幅が大きく縮小しました。

同事業の黒字化とさらなる収益拡大は、バランスの取れた事業ポートフォリオを構築していくうえで重要な課題です。今後も成長戦略上の重点事業として位置づけていきますが、さらなる投資判断にあたっては、事業成長の進捗や収益化までの時間軸、資本効率も踏まえながら、慎重に見極めていきます。

「Nitto RISE 2028」で成長の確度を高める

2026年度より新中期経営計画「Nitto RISE 2028」がスタートしました。本計画は、2030年目指す姿である「なくてはならないESGニッチトップ企業」の実現に向けた、前中期経営計画に続くセカンドステップと位置づけています。これまで取り組んできた社会課題の解決と経済価値の創造の両立をさらに進化させ、Nittoグループの企業価値向上につなげていくことが狙いです。

その重点取組みとして掲げているのが、「ダブル認定による新しい成長の実現」です。ダブル認定は、社会価値と経済価値の双方を生み出す考え方です。「Nitto RISE 2028」では、ダブル認定を受けた製品・サービスの売上収益比率を2028年度に40%まで高めることを目標に掲げています。さらに2030年度には50%以上を目指し、社会価値と経済価値を両立する事業の比率を高めることで、「なくてはならないESGニッチトップ企業」の実現に近づけていきます。

本計画で掲げる「成長の確度を高める」とは、既存事業の収益力を強化するとともに、新たな成長事業を創出し、ターゲットとする領域でニッチであってもシェアNo.1を維持・確立することです。Nittoグループでは、社会課題や顧客ニーズを捉え、現場で得た最新情報と、基幹技術、知的財産、営業体制、サプライチェーンといった強みを結びつけることで、新たなニッチトップの創出につなげていきます。このサイクルを回し続けることが、お客様の中でのプレゼンスを高め、新たなテーマ創出においてもNittoグループへファーストコールをいただける関係づくりにつながります。

既存事業では、Nittoグループが優位性を発揮できる領域に経営資源を集中し、収益性と成長性の双方を高めることを追求していきます。一方、新たな成長事業については、デジタルや次世代情報通信、半導体、環境、再生可能エネルギー、ライフサイエンスといった領域を中心に、社内外の技術と顧客ニーズを結びつけ、将来の成長につなげていきます。

「ニッチトップが新たなニッチトップを生み出すサイクル」がシステムとして確立されている

変化をチャンスと捉え成長機会に変える現場起点の意思決定

Nittoグループは、1918年の創業以来、幾度もの危機や事業環境の変化に直面してきました。そのたびに、一つひとつの製品にNittoグループの持てる力を注ぎ込み、顧客奉仕を追求することで、新たな成長の礎を築いてきました。

現在、Nittoグループを取り巻く事業環境は、個別の市場や製品分野ごとの変化にとどまらず、産業構造そのものが転換期を迎えています。脱炭素を背景とした環境規制の強化や各国の制度変更は、顧客の製品設計や求められる性能要件そのものを変えつつあります。軽量化や耐久性、信頼性への要求が高まる中で、従来の用途や市場においても、Nittoグループが提供すべき価値は変化しています。

こうした変化を成長機会に変えるためには、お客様やサプライチェーンとの対話を通じて、現場で生まれているニーズをいち早く、深く捉えることが重要です。私自身も現場に足を運び、お客様やパートナー様と直接対話する中で得られる情報を重視しています。そこで得た現場の声と、Nittoグループの技術、さらに社外の知見や技術を柔軟に組み合わせることで、新たな価値を生み出し、ニッチトップとしてのポジションを築いてきました。

また、判断と実行のスピードを高めることは、持続的な競争優位性の構築に欠かせません。私自身、高いシェアを築いていた光学フィルムにおいて、市場変化を踏まえ、中長期的な利益確保の観点から、短期的にはシェアを落とすという判断を上司に進達した経験があります。Nittoにとって何が最善かを考え抜き、必要な判断を迅速に行うことが、結果として事業の持続性を高めることにつながると実感しています。

「Nitto RISE 2028」では、こうした現場起点の意思決定をグループ全体でさらに徹底し、インダストリアルテープやオプトロニクスの継続成長に加え、ヒューマンライフの伸長も実現することで、よりバランスの取れた事業ポートフォリオの構築を目指します。

Nittoグループの成長の軌跡

オープン・フェア・ベストを徹底し、持続的な価値創造の基盤を強化する

ダブル認定による新しい成長を実現していくためには、揺るがない経営基盤が不可欠です。2026年4月より社長COOに就任し、改めて強く認識しているのは、安全・品質・コンプライアンスに関するガバナンスが、経営における前提条件であるということです。これらがひとたび損なわれれば、社会やお客様からの信頼は一瞬で失われかねません。

私は、モノづくりに携わる中で、労働災害や不正、品質問題の多くは、特別な状況ではなく、日々の判断や組織風土の積み重ねの中から生じることを学んできました。不都合な事実を直視しない姿勢や、声を上げにくい雰囲気こそが、企業にとって最大のリスクと考えています。

Nittoグループは、かねてから「オープン・フェア・ベスト」を価値観である「The Nitto Way」に掲げ、良いことも悪いこともすべてオープンにし、公正・公平に議論し、決まったことに全員がベストを尽くす風土の醸成に取り組んできました。これからも各職場におけるリーダー自らがこの姿勢を示し続けることで、健全な職場環境を育み、持続的な価値創造を支える土台を強化していきます。

このような経営基盤のもとで、Nittoグループが持続的な成長を実現していくために最も重要な財産が「人財」です。変化のスピードが加速し、将来の見通しが不確実な時代においても、新たな価値を生み出し続ける力は、失敗を恐れず、自ら考え、チャレンジする従業員一人ひとりの中にあります。

事業の成長局面において重要なのは「チャレンジの機会を提供すること」です。私自身、若手時代に重要顧客の担当を任され、チャレンジと失敗を重ねる中で成長してきました。その経験からも、人はチャレンジの中でこそ成長し、組織としての対応力も高まるものと認識しています。Nittoグループでは、ニッチトップ戦略を推進する多様な視点と高い専門性を備えた人財の育成に取り組むとともに、チャレンジを楽しみながら誰もが活き活きとやりがいをもって活躍できる環境の整備を進めています。これらは企業としての責任であると同時に、中長期的な企業価値の向上に直結する重要な投資であると考えています。

2026年3月に開催したグローバル会議では、Nittoグループ幹部が一堂に会し、「心理的安全性」をテーマに現状と課題について議論を行いました。

私は、これらの取組みを通じて、従業員一人ひとりが自ら考え、チャレンジを重ねながら成長し続ける組織を構築していきます。今後も、未財務指標として掲げるエンゲージメントスコアやチャレンジ比率を継続的にモニタリングしながら、Nittoグループの人的資本経営をさらに進化させていきます。

気候変動への対応を、競争力と企業価値向上につなげる

気候変動への対応は、事業戦略と切り離すことができない重要な経営課題です。対応が十分でなければ、競争力の低下や事業機会の逸失につながりかねません。一方、社会やお客様の脱炭素ニーズを的確に捉えることができれば、Nittoグループの技術を活かした新たな価値創出の機会にもなります。私は、経営トップとして、この認識を前提に経営判断を行っています。

Nittoグループは、さまざまな部材の提供を通じて、最終製品の性能やエネルギー効率を根幹から支える立場にあります。そのため、自らの事業活動におけるGHG排出量削減に責任をもつことはもちろん、Nittoグループの製品が社会全体の脱炭素にどのような価値を提供できるのかを、経営として常に問い続けています。

こうした考え方のもと、PlanetFlags™(環境貢献製品・サービス)の創出・拡大、省エネルギーの徹底、再生可能エネルギーの活用、製造プロセスの革新を進めています。また、原材料を供給いただくパートナー様や製品をご利用いただくお客様と協働し、サプライチェーン全体を視野に入れた環境負荷低減にも取り組んでい ます。

これらの取組みは、短期的にはコストの増加を伴う場合もあります。しかし、私はこの取組みを、エネルギー価格変動や規制強化といった移行リスクへの耐性を高めるとともに、中長期的な競争力と事業基盤を強化するための重要な投資として位置づけています。

さらに、気候変動に伴う不確実性を踏まえ、将来の事業環境の変化を見据えた複数のシナリオのもとでリスクと機会を評価し、事業戦略や投資判断に反映しています。こうしたプロセスを通じて、気候変動が事業に与える影響を継続的に把握し、経営としての対応力を高めていきます。

デジタル利活用を競争力へと転換し、価値創造を加速する

AIをはじめとするデジタル技術が急速に進展する中で、それらを使いこなす力そのものが企業の競争力を左右する時代になっています。Nittoグループにとっても、デジタル利活用は単なる効率化の手段ではなく、成長の確度を高めるための重要なドライバーです。

市場や顧客ニーズの変化をいち早く捉え、迅速な意思決定と行動につなげていくためには、データとAIを活かした経営と現場の変革が不可欠です。現場で培われてきた人財・知見とデジタルを掛け合わせることで、ニッチトップや三新活動におけるテーマ創出の数、確度、スピードを高めていきます。

同時に、成長に向けたリソースを生み出すためには、業務の“ムダ”を排除し、経営資源を再配分していくことも重要です。モノづくりの進化やサプライチェーンの強靭化、AIを活用した業務効率化を進めることで、次の成長に振り向ける時間や人財、投資余力を捻出していきます。

こうした取組みを着実に進めるためには、データ業務基盤の整備、データガバナンス、情報セキュリティの強化といった基盤づくりが欠かせません。さらに重要なのは、デジタル利活用を一部の専門部署だけの取組みにとどめないことです。従業員一人ひとりが自らの業務に取り込み、改善や新たなチャレンジを自律的に生み出していく組織文化を育むことで、デジタル利活用を持続的な価値創造へとつなげていきます。

社会課題の解決を起点に、価値創造の循環をさらに進化させる

「Nitto RISE 2028」は、Nittoグループにとって「成長の確度を高める」だけでなく、2030年目指す姿である「なくてはならないESGニッチトップ企業」への進化を問われる3年間です。

私自身、経営の責任者として、社会課題の解決を起点に事業を成長させ、その成果を資本効率の向上やステークホルダーの皆様への還元につなげていくことが責務であると認識しています。「Nitto RISE 2028」では、この価値創造の循環を、確かな結果として示していきます。

変化の激しい時代だからこそ、過去の成功体験に安住することなく、現実を直視し、変化の中に新たなニーズを見出し続けることが重要です。そのニーズを起点に新たなダブル認定を生み出すことで、Nittoグループの持続的な成長を実現することができます。

その原動力となるのは、従業員一人ひとりのチャレンジと、それを支える健全な組織風土です。これからもステークホルダーの皆様との対話を重視し、いただいたご意見を経営に反映しながら、社会から信頼され、投資家の皆様から長期的に選ばれ続ける企業を目指します。

持続的な企業価値向上に向けたチャレンジを続け、私自身が社長として先頭に立ち、その実現をリードしていきます。