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トップメッセージ

コロナ禍の逆風ながら、前年度を上回る業績を達成

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患された方々および関係者の皆様に、心からお見舞いを申し上げます。併せて、医療従事者をはじめとして感染防止対策に尽力されている方々に深く感謝いたします。
この感染症によって私たちの生活や経済は大きく変化し、Nittoグループにも多大な影響をもたらしております。特に2020年度第1四半期では受注が落ち込んだことから、この時点で業績の見通しを発表できない事態に陥りました。
しかしながら、第2四半期に入り状況が少しずつ明らかになるなか、株主および投資家の皆様に向けて方針を明確にすべきと判断しました。このような状況で、経営トップとして決断したのは、コロナ禍にひるむのではなく、むしろNittoグループの競争優位を活かして、この機に成長が見込まれることから伸ばすべき事業、そして市場が戻ってきて収益が見込める事業について強化することです。
一方で、コロナ禍の影響が甚大で今後の需要が見込めない事業については、撤退も含めて検討することとしました。こうした事業の強化、回復、撤退については中途半端に取り組むのではなく、経営トップの覚悟と責任のもとで市場環境を見極め、機を逃すことなく一気に進めるべきと考えてこの1年、尽力しました。
その中でも、たとえば在宅での勤務や学習の普及を背景にパソコンやタブレット端末の需要が拡大するなど、コロナ禍を機に回復した市場があります。その影響で液晶パネルの出荷が急増し、Nittoグループのフィルム製品の需要が伸びました。ディスプレイといえば有機ELが主流の中で、液晶の可能性を改めて実感しました。
Nittoグループでは、このように変化を「危機」ではなく「機会」と捉え、成長戦略と構造改革の両輪を回すことで、変化への対応力を発揮しました。結果として2020年度は、前年度を上回る業績を達成することができ、これまで準備を進めてきた打ち手が実を結びつつあると手応えを感じた1年となりました。

「新製品」「新用途」「新需要」それぞれの開発・開拓で可能性を広げる「三新活動」

Nittoグループには長年にわたり培ってきた「三新活動」および「ニッチトップ戦略」があります。
「三新活動」とは、新製品および新用途、新需要という3つの「新」に関して、それぞれの開発・開拓を目指して1957年に始まったNittoグループ独自のマーケティング活動です。半世紀以上にわたって積み重ねてきたこの活動こそが、イノベーションの源であり、さらなる成長を促すエンジンでもあります。
私を含め、すべてのNittoグループの従業員は入社以来、この活動の重要性を学びます。「三新活動」は企業の持続性に対する常なる危機感がもととなっています。新製品および新用途、新需要を創出したとしても、その価値が永続することはありません。特に変化の激しい現代において、多くの製品は数年のうちに需要のピークが来て、いずれは消えていきます。そのため、需要のある間に危機感を抱き、新たな価値の創出が不可欠といえます。
そこで大切なことは、1つの技術を1つのテーマで終わらせないことです。仮に自動車向けに新技術を生み出したとして、その用途だけで終わらせては意味がありません。同じ技術をほかの分野、ほかの用途で使えないかなど、異なる市場での可能性を広げていきます。せっかく苦労して開発した技術を特定の用途で終わらせることなく、応用を次々に考え出していく。これこそが「三新活動」の真価といえます。

独自性を発揮して競争優位を築く「ニッチトップ戦略」

「ニッチトップ戦略」は、成長するマーケットにおいて先行者のいないニッチ分野を見出し、Nittoグループ独自の技術を活かすことで、シェアNo.1を狙う戦略です。この中で、グローバルシェアNo.1を目指すものを「グローバルニッチトップTM戦略」、各国・エリアの市場において特有のニーズに応じた製品を投入してトップシェアを狙うものを「エリアニッチトップTM戦略」と名づけています。
この戦略により、マクロ経済などの外部要因に影響されにくい事業領域を確保することにつながります。誰もが手を出す、いわゆるボリュームゾーンの領域では、コモディティ化が進むなど、収益性が低下しかねません。「ニッチトップ戦略」はこうした状況を避けるためにニッチな市場を開拓し、独自性を発揮していち早く競争優位を築くものです。小さく生んで大きく育てる。これが「ニッチトップ戦略」の秘訣です。
「グローバルニッチトップTM戦略」は、1996年から他社に先駆けて経営戦略の一部に位置づけたもので、「Global Niche TopTM」は当社の登録商標でもあります。現在では、 ディスプレイ用偏光フィルムをはじめ、熱はく離シート、精密回路付き薄膜金属ベース基板など、15製品群以上が社内で「グローバルニッチトップTM製品」として認定され、Nittoグループの業績を支えています。
「グローバルニッチトップTM戦略」および「エリアニッチトップTM戦略」については、役員会議やグローバル幹部が集まる経営会議などで毎回、重要性を強調しています。加えて、社内での成果発表会やグローバルニッチトップTM製品の認定式、表彰などを通じて、戦略の浸透を図っています。

成長分野に経営資源を戦略的に投入

2021年度の市場環境については、COVID-19の再拡大や米中貿易摩擦などを背景に、引き続き不確実性の高い事業環境が続くとみています。その一方で、世界的な経済活動の回復に伴い、半導体や5Gスマートフォンなどのハイテク分野や、医療材や医薬品などのライフサイエンス分野が堅調に推移すると見込んでいます。Nittoグループとしては、事業活動における強みを源泉として長年にわたり取り組んできた「三新活動」や「ニッチトップ戦略」を戦略の柱として、好機を逃すことなく市場の開拓に努め、新たな成長軌道に向けた取組みを積極的に実行していく考えです。
具体的には、新中期経営計画において、外部環境の影響を受けにくい強靭な企業体質を構築し、営業利益1,000億円の安定的な創出を目指します。一方で、多様なステークホルダーの期待と信頼に応えていくため、事業活動を通じて社会課題の解決と経済価値の創造を両立させることで、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を実現していきます。
持続的な成長を実現するには、業績が回復基調にある今だからこそ、事業の新陳代謝を促す仕組みづくりが重要です。そのため、「伸ばすもの」「戻るもの」「戻らないもの」を見極めて、成長戦略と構造改革の両輪を回していきます。
さらに今後、注力する事業領域は、「情報インターフェイス」「次世代モビリティ」「ライフサイエンス」の3つの分野です。これらの領域に対して新たなイノベーションを創出していくことで、事業の持続的成長を成し遂げていきます。
「情報インターフェイス」では、前期から量産を開始したスマートフォン向け高精度基板やテレワークを背景に需要が拡大しているデータセンター向けの電子材料、半導体プロセス材料を積極的に展開しています。
2つ目の「次世代モビリティ」は、自動車用途が中心になりますが、動くものすべてが対象です。時代はエンジンからモーターへと劇的に変わりつつあります。それに伴い、車載装備のエレクトロニクス化が顕著です。電装材やネオジム磁石をはじめとする強みを発揮できる製品群を通じて、モビリティの安全性や居住性に貢献していきます。このほかにも、自動運転技術に欠かせないセンシングユニットに使用される電波吸収体など、CASE(コネクティッド、自動運転、シェアリング、電動化)分野に向けて、エレクトロニクス関連部材や機能性部材を積極的に展開していく考えです。
そして3つ目が「ライフサイエンス」です。Nittoグループは早くから医薬分野を開拓してきました。現在、ニッチ分野である核酸医薬の分野で創薬を手掛けているほか、米国で医薬品受託製造の事業を展開しています。核酸医薬の受託製造に対しては、総額約250億円の投資を行っていきます。また、創薬では独自のドラッグデリバリーシステムと組み合わせることで、有効性を高める一方、副作用の少ない医薬品の開発を目指しています。今後、治験薬から商用薬へ拡大する製造スケールに対応することで、核酸医薬の普及と先端医療の発展に貢献することを期待しています。そして、人々の健やかな生活に貢献していくことが私の願いです。
以上の3領域に対しては、すでに経営資源を戦略的に投入しており、新中期経営計画では事業成長の強化に向けて市場への展開を推進していきます。

■「 成長戦略」と「構造改革」の両輪の経営

新たな成長基盤を構築し、企業体質を強化

市場の中期的な展望としては、コロナ禍がなおも続くものと覚悟しなければなりません。その中で生活も産業も大きく変わっていく一方、ワクチンの普及とともに、事態はいずれ収束に向かうと想定しています。
不確実性が拭えない時代において、Nittoグループとしては、新たな成長基盤の構築をこれからの3年でしっかりやり切る覚悟です。成長分野には経営資源を投入していく反面、無駄となっている分野はこの間にスリム化します。コロナ禍という厳しい時期だからこそ、危機をむしろ好機として、企業体質をより強靭なものにできるチャンスだと考えています。
特に、経営トップとしては「戻らないもの」の見極めが一番重要であると考えています。これを見極めた後、構造改革を成し遂げ、その分の経営資源をすべて成長分野に振り向けます。スリム化はこれまでも取り組んできましたが、コロナ禍の今こそ、企業体質を強化してまいります。
そして、長期的なビジョンについては、Nittoグループとして、世界中のすべての場所で人々の健やかで快適な暮らしを実現していくことに挑戦し、これまで以上に世の中にとって必要とされる存在であり続けたいと考えています。そのためにも、あらゆる場所でイノベーションにチャレンジし、お客様に驚きと感動を提供していきます。
また、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を実現するため、ESG(環境・社会・ガバナンス)を意識した経営を一層強化していきます。特に環境関連では、カーボンニュートラルに向けた2030年までのCO2削減方針を定め、脱炭素技術導入と徹底的な省エネの実行のために、次の10年間で600億円強の投資を計画しています。

「サステナビリティ重要課題」の解決に向けて、全社を挙げての取組み

近年の企業経営では、自社の成長だけでなく、サステナブルな社会の実現に向けた貢献が求められています。Nittoグループでは、優先的に取り組むべき課題として「サステナビリティ重要課題」を2019年度に特定しました。これにより、従業員一人ひとりが当事者意識を持つとともに、グループ一丸となってこれらの課題を解決できるよう取り組んでいく考えです。
中でも環境問題については、従来よりCO2排出削減や廃棄物削減などについて、地球と地域の環境を保全するために独自基準を設けるなどの取組みを推進してきました。粘着テープや光学フィルムのトップランナーとして、今後も溶剤の使用量や廃プラスチックの削減をはじめ、環境負荷の低い製品やプロセスの開発を進め、持続可能な社会の実現に寄与していきます。その際、世界という広い視野のもとで環境の変化に対し、時代に先駆けて取り組んでいきます。
2020年度には、ESG関連の取組みをさらに強化するため、サステナビリティ本部に「ESG推進部」を設けました。サステナビリティ重要課題を実現させるためにあるべき姿を描き、中長期目標の設定や具体的な活動計画への落とし込みを推進しています。
また、ESGに関連する課題についても開示し、課題解決に向けて前進する姿勢を示していきます。そしてトップが旗を振って役員、従業員とともにその意識を共有することで、いわば内部統制の一環として機能することを期待しています。
中長期では、ESG経営を加速させて企業価値の向上に取り組んでまいります。また、地球環境や社会に貢献できる製品やソリューションを世界に提供し、事業活動の推進によって、社会課題の解決と経済価値の創造の両立を目指していきます。Nittoグループは、経営理念のMissionとして「新しい発想でお客様の価値創造に貢献します。」を掲げており、一貫して顧客視点での価値創造を重視してきました。今後は持続可能な未来に向けて、お客様の概念を、目の前のお客様だけではなく、地球環境や人類・社会にまで広げることで、ステークホルダーの持続可能な未来と幸福のためにチャレンジしていくことが重要であると考えます。長期的なビジョンをもってあるべき姿を描き、それを実現するための道のりとして、バックキャストで今取り組むべきことをクリアにしていきます。
Nittoグループの技術を見渡すと、環境に貢献できるものが多数存在します。これらを活用することで、サステナビリティに貢献していきます。まずは社内の生産現場などで活用して効果を出し、その次にお客様にも使っていただくことを考えています。たとえば、メンブレン製品は工業廃水を強力にろ過してきれいにできるものがあります。液体をろ過するだけでなく、CO2のような気体を分離することもできます。こうした技術、製品を社内で活用するとともに、対外的にはお客様への提案につなげて環境保全に貢献していきたいと考えています。また、フッ素系機能材料は高機能マスクにも使われるようになりました。こうした取組みはまさにNittoグループの持ち味を活かしたものといえます。

■持続的な成長に向けて

事故・災害ゼロを目指し、経営トップが先頭に立ち全社一丸となって対処

モノづくりに従事する企業として、事業における安全の確保もまた最重要課題の1つです。Nittoグループでは、「安全をすべてに優先する」という方針のもとに、あらゆる事故・災害をゼロにすることを目指しています。
製造現場では、粘着テープやフィルム製品を数多く製造するため、工場内には回転部や駆動部を有する製造設備が多いのが特徴で、労働災害はこうした設備を中心に発生しています。重大災害件数は2014年以降減少傾向にあるものの、事故・災害の撲滅を目指して粘り強く取り組んでまいります。
課題はハード面だけでなく、ソフト面にもあると考えています。そのため、安全対策のための設備投資は従来に増して惜しまず行うとともに、すべての従業員に対して危険予知訓練や安全教育を定期的に実施していきます。また、事故・災害が生じた現場には、私自身が赴いて状況を把握し、現場の従業員と直接話をして、対策を講じるように努めています。今後、事故・災害ゼロに向けて、従業員一人ひとりが自分事として安全意識や行動を改善できるように安全文化の醸成に取り組んでまいります。

持続的成長を担う次代の「Nitto Person」の育成に向けた取組み

事業の海外展開が加速する現在、ガバナンスのさらなる強化が求められています。Nittoグループは、事業を執行する「事業軸」、エリア統括を行う「エリア軸」、専門機能で事業やエリアを支える「機能軸」からなる三軸経営となっていますが、それぞれがガバナンス面でもしっかり機能するよう、2021年度より内部統制体制を強化しました。これにより、従来に比べてより実効性のあるモニタリングが可能になっています。引き続き、体制の強化と実効性の向上を図っていく考えです。
併せて、Nittoグループの行動指針である「The Nitto Way」を踏まえた「Nitto Person」としての心構えを全社に浸透させていく活動も、モニタリングとともに重要といえます。
「Nitto Person」の育成は、持続的成長という点でも不可欠な課題です。Nittoグループにはチャレンジする人を応援する文化があり、たとえ失敗したとしても再び挑戦できる企業風土が特徴です。一人ひとりの積極的なチャレンジを促すことで、次世代の「Nitto Person」を育成できると考えます。
中でも、何が課題であるかを自分で考えて優先順位づけできる人財が私の考えるリーダー像です。そして、グローバルレベルで活躍できるリーダーや、次世代の経営への担い手を育成する研修の1つとして、「Nitto Global Business Academy」を運営しています。この研修にはこれまで世界中のNittoグループから300名以上が参加し、より強いNittoグループをつくるための機能的な人財育成の場として運営しています。
また、2020年度からは、新規事業創出大会として「Nitto Innovation Challenge」を開催しました。この大会では世界中のNittoグループ社員から新規事業アイデアを募り、応募者に対し、市場調査やコンセプト検証を支援する取組みを実施しています。初年度である2020年度は、グループ全体から1,107件の新規事業アイデアが集まり、現在、厳しい審査を経て最終選考に残ったチームが新規事業化を目指しています。
一方、市場環境やお客様のニーズをはじめ、私たちの周りは、想像を超えるスピードで変化しています。これらの変化に迅速かつ柔軟に対応するためには多様な価値・発想を取り入れるなどダイバーシティへの対応が重要であると認識しています。昨年から外国籍の女性に社外取締役として経営に参画頂いており、そのことによって空気が変わりつつあると感じています。引き続き多様な人財の採用、育成、登用に向けて実効性のある取組みを強化していく考えです。

最後になりましたが、近年、株主および投資家の皆様との対話において、さまざまな経営課題に関する率直なご意見をいただいております。皆様の声に真摯に応えつつ、企業価値の向上に取り組むことの重要性をあらためて感じております。

2021年度においてはコロナ禍がなおも続き、世界経済を取り巻く環境は厳しいものがあります。しかし、Nittoグループは逆境に動じることなく立ち向かい、変化をチャンスと捉え、経営の諸課題に真摯に対処し、着実に成長につなげてまいります。つきましては、皆様の変わらぬご支援を賜わりますよう心よりお願い申し上げます。

日東電工株式会社
代表取締役 取締役社長
CEO COO

髙﨑 秀雄

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