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使い切りホルター心電計


開発プロジェクトメンバー座談会

使い切りホルター心電計


開発プロジェクトメンバー座談会

世の中を変えられる、その可能性を信じて。世の中を変えられる、その可能性を信じて。

国内外で死亡率が高く、後遺症が残るケースも多い心疾患。その早期発見や適切な治療へつなげるために、医療機関ではホルター型心電図検査※1が行われています。

2021年9月にリリースされた、Nittoが開発・製造を担うホルター心電計は、ICTを活用した遠隔診療分野のマイルストーンに位置づける製品であり、Nitto初の医用電気機器です。IPX4※2の防水性能も備えた厚さ6mm、重さ11gのコンパクトな心電計で使い切りタイプ。快適な装着と日常生活での測定を実現しています。

測定データはパートナー企業が開発したクラウド心電図解析サービスで解析。装着者は計測後にホルター心電計を郵送で返却でき、医療機関はオンラインで検査結果をいつでも入手できるなど、心電図検査の負担軽減に大きな期待が寄せられています。

このホルター心電計の完成まで約5年。開発プロジェクトの中核を担った情報インターフェイス事業推進部の4名が集まり、それぞれが課題とどのように向き合い、乗り越え、製品化までたどり着いたのか。プロジェクトを通してのNitto開発陣の想いや今後について、語り合いました。

※1 ホルター型心電図検査:心電図を継続して長時間記録する検査。胸に電極を付け、心電図を連続して記録することで、脈の乱れを検知する。
※2 IPX4:電気機械器具の外郭による保護等級(IPコード)。IPX4は水の飛まつに対して保護。

PROJECT MEMBER
  • Keiji Takemura
    竹村 敬史

    2006年 キャリア入社
    情報インターフェイス
    事業推進部(当時)
    開発職/部長

    今回のホルター型心電計の発案者で、プロジェクト全体を統括。コンセプトワークやパートナー企業との連携など、実現に向けた事業計画の構築も担当。

  • Sumiyo Maruyama
    丸山 純代

    2006年 新卒入社
    情報インターフェイス
    事業推進部 開発1課
    開発職/係長

    薬剤師免許を持つ。規格ヘの適合や医療機器認証、薬機法(医薬品医療機器等法)の準拠など、製品化に欠かせない役割を担った。
     

  • Ryoma Yoshioka
    吉岡 良真

    2012年 新卒入社
    情報インターフェイス
    事業推進部 開発1課
    開発職/係長

    デバイスの開発リーダーを担い、パートナー企業と共同でホルター心電計の開発・設計に取り組む。竹村とは発足当初から二人三脚でプロジェクトを進行。

  • Sota Kondo
    近藤 聡太

    2019年 新卒入社
    情報インターフェイス
    事業推進部 開発1課
    開発職

    入社1年目からホルター心電計に使用する部材のスクリーニングや選定などを担当。吉岡とともに製造を担うメディカル事業部との連携にも貢献。

1

プロジェクトのはじまりと
それぞれの参加経緯を教えてください。

竹村

情報インターフェイス事業推進部は、Nittoの重点分野のひとつとして、モノとデータを結びつけるIoTを活用した新たな技術・サービスのビジネス化をミッションとしています。2016年当時、少しずつ広がりはじめていた遠隔診療の礎となるような製品を世に送りだすため、メディカル事業部と連携した製品づくりをテーマに検討を重ねる中、私は手軽に計測できるコンパクトな心電計の開発を発案しました。

実はその前年、循環器科にかかり、病院で処方されたホルター心電計を装着して1日過ごした経験がありました。診断結果はまったく問題なかったのですが、体に大きな電極を装着する不便さ、何度も通院が必要といった不満を、私自身が体感していたのです。もっと簡単に、正確に、安心して心電図を測定できる心電計のニーズが、多くのドクターや患者さんにあるのではと考えたのが、このプロジェクトの原点です。

近藤

竹村さん自身の実体験がもとになっていたんですね。

吉岡

「こんな心電計を考えているんだけど、1週間くらいで試作品つくってくれない?」と笑顔で話す竹村さんの無茶振りが、このプロジェクトの私のスタートでした(笑)。ただ、竹村さんの話を聞くと、確かにNittoの医療用テープ優肌絆®のような、長時間貼っても肌かぶれしにくい材料をいかして、コンパクトな心電計ができればおもしろいかも…と興味を持ったんです。

そこで、Nittoのフィルムドレッシング材に市販のICチップを載せて簡単な試作品をつくり、心電が測定できるかを試したら、できたんです。今とは比べようもないほど稚拙なものでしたが、この方向性を突きつめれば…と開発の道筋が見えたように思いました。

私は当時、入社後からICT事業部門で4年間携わってきたプロジェクトが技術的な課題で頓挫してしまい、今の部署に異動後も明確な目標が定まらない、中途半端な心持ちでいました。そんなときにこの試作品をつくったことがきっかけで、頓挫したプロジェクトのリベンジ、「自分の手がけた製品を世の中に出したい」という想いが強くなりました。

竹村

丸山さんには重要な役割をお願いすることになりましたね。

丸山

私は入社後、メディカル事業部で5年間医薬品の開発に携わり、その後、Nittoの医薬品などの薬事職を担当。2017年秋からこれまでの知見を新たな製品・技術にいかすべく今の部署に異動となりました。

竹村さんと吉岡さんが新しい心電計の開発をはじめようとしている話を聞いたとき、正直、難しいだろうと思っていました。Nittoには救急絆創膏や創傷被覆材のように電気エネルギーを使わない医療機器しかなく、技術的な課題以上に、医用電気機器として製品化するハードルが高いように感じたのです。

それでも竹村さんや吉岡さんのプロジェクトが本格的に進みだすと、私も2人の熱意にリードされるように、期待されている薬事の分野でNitto初となる挑戦に取り組みはじめました。

近藤

私が入社した2019年は、ホルター心電計に使うデバイスの開発・設計の真っ最中。1年目からこのプロジェクトに参加できたのは、「新しいことがしたい!」と面接で力説したからかもしれませんね。

最初に任されたのは、デバイスのスイッチのクリック感を出すための部材選定でしたが、このとき、竹村さんに喝を入れてもらったことを鮮明に覚えています。1年目の私は部材の評価テストだけを行い、最終決定は先輩や上司がするものだと思い込んでいたのですが、「責任を持って、自分で決めなさい」と言ってくれたんです。自分を1人の技術者として、戦力として見てくれていることに心を揺さぶられ、このプロジェクトを「自分事」と捉えるきっかけになりました。

2

プロジェクトではどんな困難を、
どう乗り越えましたか?

竹村

プロジェクトのリーダーとして、製品を世の中に出すための事業計画を構築することが一番の課題でした。特に測定データの解析ソフトウエアは技術的に自社での開発が難しかったのですが、社員の紹介で、クラウド心電図解析サービスを立ち上げたばかりだった、ドクターを擁する医療系ベンチャー企業さんと出会えたことで、ソフトウエアの課題を解決できる光明が見えました。「この製品には必ずニーズがある」という彼らの言葉に、心が折れそうになったときもどれだけ支えられたことか…。

社外とのコンバージェンス(共同作業)は言葉にすれば簡単ですが、Nittoにはそのノウハウが蓄積されておらず、実践には時間も労力も必要でした。それでも社内外の方々とプロジェクトのコンセプトを共有し、検査サービスの仕組みづくりに携わったことは、プロジェクト成功の大きな分岐点になったように思います。

吉岡

パートナー企業さんに試作品を確認していただき、患者さんや医療機関のニーズに応えられる製品コンセプトだと高い評価を得られたことは、自信になりました。ただ、Nittoには電子デバイス開発の知見がなく、トライ&エラーの日々。期待されている結果を出せなかった時期は苦しさがありましたが、ネガティブな気持ちにはならなかったのは、世の中を変えられる可能性を持った製品に対するワクワク感が勝っていたから。

積極的にメンバーとコミュニケーションを図り、「失敗は気にせず、どんどん挑戦しよう!」というムードづくりにも気を配りました。

竹村

みんな、前向きに取り組めていたよね。

近藤

あれはデバイスの仕様決定の1ヶ月前。ある部品の選定を担当したとき、自分の決めた部品選定に誤りがあり、測定が不安定になってしまう不具合を起こしてしまいました。このタイミングで全面設計変更!? というような大ピンチ…。必死で部品を見直し、評価テストを何度も繰り返して事なきを得ましたが、あのとき、竹村さんや吉岡さんは、必要以上に介入せず、自分で解決できるまで見守ってくれました。実はそんな2人のスタンスが、私のモチベーションを上げてくれたんです。

もともと負けず嫌いな性格もありますが、ここまで任せてもらえるNittoの仕事はおもしろい! 入社してよかったとあらためて感じました。

吉岡

ピンチのときこそ、成長のチャンスだからね。 丸山さんはどうでしたか?

丸山

医療機器は患者さんの健康被害を防ぐために、厳しい規格が設けられています。心電計の開発・設計が進む様子を間近で見ながら、私は規格に適合しているのかどうか、試験機関とやりとりしながら膨大なタスクを一つひとつチェックし、問題があればどう解決するかを検討・指示するポジションにいました。

Nitto初の医用電気機器ということもあり、どういった要求事項があるのかを正しく理解するため、当初は350ページ以上の規格書を読みこむことにかなりの時間を費やしました。その上で、懸念事項に対しては最短で対応できるよう、なるべく具体的な解決手段を開発チームに伝えることを心がけました。

「困難はあっても、解決手段は必ずある——」そんな前向きな気持ちで臨めたのは、ムードメーカーの竹村さんがチームを引っ張り、あきらめることなく技術的な課題をひとつずつクリアしていく吉岡さんや近藤さんの頑張りを、すぐそばで見ていたからだと思います。

3

もっともうれしかったこと、
成功や手応えを感じたときは?

吉岡

開発・設計が固まり、試作品もほぼ完成バージョンができあがった段階で、次は製造を担う東北事業所のメディカル事業部との量産化に向けた連携がスタートしました。

私たちの部署はスピード感を持った製造サイクルを是とする風土がありますが、メディカル事業部は医療機器の製造を担っているため、慎重さを第一とする風土があります。当初はお互いのポリシーのぶつかり合いで、着地点を見つけるのに時間がかかりました。でも、そこは私と近藤さんが半年間勤務地を東北事業所に移し、直接議論を重ねることで道筋をつけることができました。この連携がうまくいったことが、私はすごくうれしかったですね。

近藤

メディカル事業部のみなさんは既存製品の製造も担っているわけで、そこにプラスして新規製品の製造立ち上げとなると、電話やメールで簡単にお願いできるものではありません。現地に勤務地を移して、直接何度も話をすることで、製品や私たちの想いを理解してもらえたことがよかったのだと思います。

組み立ての工程一つひとつ、たとえば糊の接着はどう行うのか、温度や圧力はどれくらいか…といった、細かな部分までドキュメントを残しながら進めましたので、時間はかかりました。でも、私たちの熱意が伝わったのでしょう。最終的にメディカル事業部のみなさんに「この心電計はすごいね」「一緒に取り組もう」と興味を持ってもらうことができました。

竹村

ICT × メディカルの組み合わせは社内でも注目を集めました。

丸山

私はメディカル事業部に在籍して、医療機器の許認可取得を担当していた経験がありましたので、吉岡さんや近藤さんにはミーティングなどを通してアドバイス。メディカル事業部との人脈も使って、多少なりともコミュニケーションの潤滑油になれたかもしれません。自分のキャリアや経験をこのプロジェクトに還元できたのはうれしかったです。

竹村

こうやってプロジェクトを振り返っているけど、実は吉岡さんが最初に試作品をつくって心電が測定できた段階で、私は「このコンセプトはいける、世の中を変えられるはずだ!」という手応えを感じていました。もちろん、課題は山積みでしたが、医療機関の現場でドクターと話をするたびにこの心電計のニーズの高さを実感し、手応えは確信に変わっていきました。

だから今、プロジェクトメンバーの誰もが、ホルター心電計の可能性を信じ、ついてきてくれたことを何よりうれしく感じています。時には無茶も言いましたが、みんなにはホント、足を向けて寝られないですよ(笑)。

4

このプロジェクトを通して得たものは?

吉岡

自分の手がけたホルター心電計が世の中に出ることにうれしさを感じる一方で、それが簡単ではないことを、あらためて実感する機会になりました。開発や設計のことだけを考えていた自分の視野が、製品化やその先まで広がったように感じています。

今回で、以前頓挫した経験にリベンジを果たすことはできたように思いますが、次は世の中に出すだけではなく、世の中をどう変えていけるか、そこにウエイトを置いた開発に取り組んでいきたいと思います。

リリース後は、いよいよ市場からのフィードバックがあります。その声を近藤さんや部署のメンバーとともに次世代機に反映していくことが、目下の目標です。

近藤

入社1年目からこのプロジェクトに参加でき、開発・設計から量産化までのひとつのサイクルを、失敗も成功もしながら経験できました。また、竹村さんや吉岡さんがメンバーをリードしていく姿を間近に見て、仕事への意識や取り組む姿勢は大きく変わりました。すでに次世代機の企画も進んでいますが、二度目はもっとスムーズに、他部署とも連携を取りながら取り組めるはず。次も成功させて、またみんなでリリース発表を待ちわびるようなワクワク感を味わいたいですね。

丸山

Nitto初となる医用電気機器が認証され、世の中に出せたことに大きな価値があると感じています。薬学系出身の自分の知識や経験を、人の役に立つことにいかせればと思っていましたが、コロナ禍の今、医療現場に貢献できる可能性を持った製品に関われたことは、大きなやりがいになりました。

今後はプロジェクトで得た薬事の知見を社内で水平展開して、次の医療機器の製品化にもつなげたいと思います。

吉岡

では最後に、このプロジェクトのリーダーから。

竹村

ホルター心電計のテーマのひとつは「1億3000万人の日本人が毎日貼り替えられるデバイス」。それくらい簡単に、誰もが安心して利用できる医療機器として、医療の発展に貢献できればと思っています。また、その実現のために、Nittoの各部署やパートナー企業とのコンバージェンスがこれまで以上に欠かせないことも、今回のプロジェクトで学びました。

もちろん、ここで終わりではありません。私は世の中をよい方向へ変えられる、その可能性を信じて、これからも新製品の開発や新市場の開拓を続けます。そして若手社員の取り組みを全力で応援していきます。

丸山さん、吉岡さん、近藤さんも、ぜひ今回の経験を次にいかしてください。社員一人ひとりのチャレンジが、世の中に期待され、貢献できる製品を送りだすことにつながるはずです。