Nitto

「グローバルニッチトップ™」戦略で
成長続ける日東電工

#2 髙﨑秀雄社長インタビュー

「ニッチ」にこだわり
ナンバーワン目指す
持続可能な未来に向けて

「ニッチ」にこだわりナンバーワン目指す持続可能な未来に向けて

日東電工(Nitto)は、「グローバルニッチトップ™」戦略を核に世界で存在感を高めてきた。#2では、同社の髙﨑秀雄社長にインタビュー。同戦略の神髄、ビジネスモデル上の位置づけ、「グローバルニッチトップ™」製品が生み出される背景、新たに狙う「ニッチ」などを聞いた。

変化し、成長するマーケットへ
Nitto固有の技術やノウハウを投下

――「グローバルニッチトップ」戦略について教えてください。

髙﨑 平たく言えば差別化戦略です。我々の主戦場であるエレクトロニクス業界は変化がとても激しい。その中で顧客企業や市場とともに成長していくために、先行者のいない場所を見つけ、Nitto固有の技術や特許、ノウハウなどを投入しナンバーワンを目指す――。特に弊社がこだわっているのは、ハイエンドな領域です。市場の拡大・浸透とともに、ハイエンドもいずれはミドルからローエンドになります。コモディティー化が進みボリュームゾーンになると、価格競争に終始し、たとえ売上高が上がっても利益率が下がってしまう。

Nittoは売上高より利益率を追求しており、2020年度の営業利益率は12%、23年度目標は15%と、常に2桁以上です。目標達成のためには、初めからミドルやローエンドを狙うのではなく、ハイエンドを狙う。それがNittoのポリシーです。「ニッチ」を辞書で調べると、「すき間」「狭い」といった少しネガティブな印象の言葉が並んでいますが、弊社にとって「ニッチ」は、居心地のいい場所。そこでナンバーワンシェアをとっていくのが、Nitto流の成長戦略なのです。

営業利益率

15%

小さく生んで大きく育てる
50年以上続く「三新活動」源泉に

――どのような経緯で始まった戦略なのでしょう。

髙﨑 弊社には、50年以上前から「三新活動」というマーケティング手法があります。新製品を開発したり、新しい技術を加えたりして新用途を開拓する。一つの技術を一つの製品で終わらせず、新しい需要を創造していくマーケティング活動です。この「三新活動」を源泉に、1996年に始めたのが「グローバルニッチトップ」戦略です。

当時は液晶ディスプレーの技術革新の真っただ中で、Nittoの偏光フィルムは採用されていました。光の屈折などを利用して色を出す機能性材料です。偏光フィルムはそれまで、電卓や時計などで使われていたのですが、表示面積が小さい。将来的にディスプレーが大きくなっていくのか疑問もあった中、当時の社長が偏光フィルムの成長性を見据え「ニッチトップにしよう」と決断したのです。その後、テレビの大型化に加え、パソコンやスマホ、タブレット端末などへ用途も広がり、偏光フィルムはNittoの大黒柱に成長しました。「グローバルニッチトップ」戦略の秘訣は、小さく生んで大きく育てることです。

髙﨑秀雄

「グローバルニッチトップ」は製品や技術だけではありません。材料やビジネスモデルなど多岐にわたっている点も強みです。例えば「ロール・トゥ・パネル」と呼ぶ事業モデル。テレビ向けの偏光フィルムは、指定のサイズに切断して供給していましたが、ロール状の材料を持ち込み、顧客企業の生産ライン内でパネルに貼り合わせる仕組みです。最初は顧客企業の現場から猛反対されましたが、歩留まりの向上で廃棄ロスを削減でき、在庫を圧縮することも可能になり、まさにWin-Win(ウィン・ウィン)なんです。「ロール・トゥ・パネル」は他社へも広がり業界のスタンダードになりました。ハイエンドがミドルエンドになっても、ひとひねりしたアイデアを加えることで、新たな「ニッチ」が生まれるのです。

世界中の社員から
毎年1000件のアイデア
スピードと完成度の両立が重要

――「グローバルニッチトップ」製品は、どのように生まれるのでしょうか。

髙﨑 Nittoには、新製品比率35%というルールがあるんですよ。発売から3年半以内の製品の全売上高に占める割合で、経営指標にも入れています。この比率を維持していけば、3年で全商品が入れ替わる計算です。もちろん、製品ごとでライフサイクルには違いがありますが、実現に向けて、スピードと完成度の両立が重要だと言い続けています。

Nitto Innovation Challenge 1000件/1年

Nitto Innovation Challenge 1000件/1年

Nitto Innovation Challenge 1000件/1年

Nitto Innovation Challenge 1000件/1年

R&Dや事業部の研究開発部門では、プロとしてさまざまなテーマに取り組んでいます。初期段階では「こんなものはダメ」とは言いません。社長の私と、CTO(最高技術責任者)、CFO(最高財務責任者)の3人で判断する「経営ファンド」を使って水や肥やしを与えながら好きなように挑戦してもらいます。
さらに、一昨年からは「Nitto Innovation Challenge」と名付け、世界中のNitto従業員からアイデアを募集。毎年約1000件の応募があるんですよ。Nittoには、たくさんアイデアを出し、テーマ化、製品化、事業化へ向けて頑張る風土がある。それが大きな強みなのです。

ヒューマンライフ
 核酸医薬事業を推進
ESG関連への意識、より高まる

――寄せられるアイデア、Nitto として取り組むテーマに変化はありますか。

髙﨑 これまでは、世の中の人たちの生活の利便性に貢献してきました。目には見えなくても、便利なところには必ずNittoがいる。ところが2018年に創立100周年を迎えたころから、人の命や健康、ESG(環境・社会・ガバナンス)関連など社会課題の解決を目指すアイデアが増えてきました。特に環境への意識が高くなっており、例えば、テープはしっかりくっついてはがれないことが求められますが、水、熱、電気、UV(紫外線)などがトリガーとなり、きれいに「はく離」するという技術もあります。「はく離」するという新たな機能の提供により、顧客の工程で、必要なものを選別し再利用するといったアイデアも生まれてきます。

健やかで快適な暮らしを支えるヒューマンライフの領域で、特に注力しているのは医薬品です。もちろんこの分野でも「ニッチ」にこだわり、核酸事業を推進しています。核酸医薬は病気に関わる遺伝子の働きを制御するため、難治性疾患の治療で期待されています。この事業は2011年に、核酸医薬受託製造大手の米アビシアバイオテクノロジー(当時)を買収したことで大きく前進。同社の技術と弊社の技術力、生産力が一体となり、Nittoは既に核酸医薬の原薬製造では世界市場で大きなシェアを持つまで成長しています。

コロナ禍のキーワードは加速
「伸ばすもの」
「戻るもの」「戻らないもの」
見極める

――新型コロナウイルスの事業への影響をどのように捉えていますか。

髙﨑 キーワードは加速だと思っています。弊社は重点分野として、ヒューマンライフとともに情報インターフェースと次世代モビリティーを挙げています。医薬分野はもちろん、デジタル化の動きも急に進み出したと実感しています。情報インターフェースでは、特にプラスチック光ファイバーに期待。データセンターやVR(仮想現実)、遠隔手術といった用途が考えられます。次世代モビリティーでは、センサーがより重要になると考えています。例えば、弊社の電波吸収体というシートが貢献できるでしょう。

Nittoでは、コロナ禍で先行きが見えなかった昨年第一四半期に、事業を「伸ばすもの」「戻るもの」「戻らないもの」の3つに見極める作業をしました。「伸ばすもの」はスマホなどのハイエンド領域で、「ニッチトップ」そのものです。「戻るもの」の代表はタブレットとノートPC。テレワークや遠隔授業の普及ですぐに戻りました。「戻らないもの」は液晶テレビでのコモディティー化した領域で、縮小も含めメリハリのある対応を社内には伝えました。むしろ、主戦場である中国のメーカーに技術供与し、弊社はロイヤルティーで収益化を図っていきます。

次世代モビリティー/情報インターフェース/ヒューマンライフ

コロナ禍のキーワードは加速「伸ばすもの」「戻るもの」「戻らないもの」見極める

事業通じ、
社会課題解決と経済価値創造を両立
まねはできても
100%同じモノは作れない

――「グローバルニッチトップ」製品はまねできないのでしょうか。

髙﨑 今の分析技術は非常に進歩しているので、似たようなモノは作れるかもしれませんが100%同じモノは作れません。ただし、BCP(事業継続計画)の観点でも社会的責任という面でも、Nittoしか提供できないという状況は許容されないかもしれません。だからこそ「オンリーワン」ではなく「ナンバーワン」を目指すことが大事なのです。

――日経電子版読者にメッセージをお願いします。

髙﨑 Nittoの製品は中間材料なので、なかなか身近に感じていただくことができません。でも、例えば皆さんが毎日手にされているスマホの中には何種類ものNitto製品が使われているんですよ。これからも「ニッチ」にこだわり健やかで快適な暮らしに貢献できる企業でありたいと思っています。Nittoといえば「グローバルニッチトップ」と多くの皆さんに知っていただけるよう、社会課題の解決と経済価値の創造を両立させ、持続可能な未来と幸福のためにチャレンジし続けます。

※「Global Niche Top/グローバルニッチトップ」は、日東電工の登録商標です。

髙﨑秀雄

プロフィル

髙﨑秀雄

(たかさき・ひでお) 1953年大阪府生まれ。78年明治大学商学部卒、日東電気工業(現日東電工)入社。電子材料、光学材料など同社の幅広い部門を歩む。2005年日東ヨーロッパ社長、08年取締役、14年4月から現職。

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