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膏薬

テープの歴史館

第2章 粘着剤が出来るまで

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膏薬粘着テープのルーツ

粘着剤のはじまりは、膏薬

接着剤と粘着剤とは、どう違うのでしょう。最も大きな違いは、粘着剤が手軽に貼れて、しかも簡単に剥がせるという点です。そのはじまりは医薬品の1つ、膏薬(こうやく・plaster)でした。

膏薬は、「くっつける」材料に薬成分を加えたものです。傷や皮膚病の治療に使われました。
紀元前2055年に記された中国の医学書には「薬草を煎じた薬を松脂、乳脂、ニカワ、植物油などと混ぜて布に塗り、傷口や傷む局部に展着すべし」とあります。これが膏薬に関する最も古い記録です。
紀元前17世紀の古代エジプトでは、布にゴム糊のような物質を塗った包帯状のもので密閉し、傷の治療をしていたことが知られています(コラム参照)。
さらに、紀元前42~37年頃には、古代ギリシャでダイアキロン硬膏がつくられました。これは、豚脂、鉛丹(酸化鉛)、薬草の汁を、布あるいは皮に塗り付けた膏薬です。
中国でも、5世紀頃に活躍した医学者・陶弘景が「名医別録」という著書の中で膏薬を紹介しており、その普及がうかがえます。

日本での最初の記録としては、9世紀頃に編纂された法令集「延喜式」に、10種類もの膏薬の名があげられています。さらに江戸時代になると、富山の薬売りの商業的成功とともに薬事知識が一般化し、膏薬の利用も盛んになりました。この頃の膏薬は、ゴマ油で固めた生薬を紙に塗り、貼り付ける時は温めて軟らかくしてから使用するタイプのものでした。「萬金膏」などは多くの力士が愛用したため、相撲膏とも呼ばれ、江戸の人々の間で広く知られていました。

天然ゴムを加えることで、粘着剤が誕生

このように、長い間人々に親しまれてきた膏薬ですが、上記のものはいずれも粘着剤ではなく、温めて軟らかくしてから体に貼り付けるタイプが主流でした。当然、使いにくく、剥がすときに痛みが伴うこともありました。
そのため、長い年月をかけて改良が行われましたが、「貼って、剥がせる」という相反する性質を持つ膏体は、なかなかできませんでした。

大きな進歩があったのは、18世紀後半からのことです。産業革命によって技術革新がおき、ドイツで柔軟性と粘着性とを持った「松脂硬膏」が開発されました。薬局方名は、ドイツではHeftpflaster、イギリスではResin Plasterと称されています。しかし、まだ粘着剤と言えるものではありませんでした。
1845年、ドクター・ヘンリー・ディが「天然ゴムを加えた膏体」を開発し、W.H.シカットと二人でU.S.特許を得ました。これは、よく貼り付き、きれいに剥がれる性質を示し、まさに粘着剤の特性を持っていました。ついに粘着剤が誕生したのです。この膏薬の名称は、アメリカ薬局方で1870年にAdhesive Plasterとなり、その後日本では「絆創膏」と訳されたようです。

コラム:傷をきれいに治す方法

古代エジプト人は膏薬を貼って「傷を密閉して」治療していましたが、これは傷を早くきれいに治す方法なのです。
みなさんが子供の頃に、傷口は乾燥させて「かさぶた」をつくると良いと言われた経験、ありませんか? 実は、傷口は乾燥させず、密閉して水分の蒸発を防ぎ潤いのある状態にしておいた方が、早くきれいに治癒するのです。それが確認されたのは1950年頃ですが、古代エジプト人は、このことを経験的に知っていたのですね。

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