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開発ストーリー

執念が生み出す世界初 ―― ぜんそく治療用テープ製剤

第1章:世界初の、ぜんそく治療用の粘着テープ製剤

1998年にアボット ジャパン株式会社とNittoが共同開発した「ホクナリン®テープ」は、世界初の「ぜんそく治療用テープ製剤」である。粘着剤の中に気管支拡張効果のあるツロブテロールという薬が入っているテープであり、体に貼ると薬が皮膚から吸収され、毛細血管に入り、血液に乗って全身に回る。これはまさに針のない注射と同じである。結果として薬の効果が発現し、気管支が拡張されて呼吸を楽にしてくれる。
これまでは、薬を飲んだり、口や鼻から吸入したりという方法が取られてきたが、このホクナリン®テープには、常に安定した量の薬を体内に供給できるという利点がある。特に、ぜんそくの発作は早朝に起きることが多いが、このテープを貼っていると、それを抑えることができ、多くの患者の方々や看病している周りの方々から喜ばれている。
しかし、その開発には、11年もの歳月と、挑戦の繰り返しが必要だった。

ホクナリン®テープ

第2章:難関は、必要な時に必要な量の薬を送達すること

皮膚に貼った薬が体内に運ばれる仕組み

薬の入った粘着テープ(経皮吸収薬)を設計する技術はNittoが得意とする分野であり、すでに1983年に、狭心症の発作を予防する製品を開発している。

過去の経皮吸収薬の特徴は、薬を長時間にわたって持続的に体内に入れることであった。開発者たちはさらに進化した経皮吸収薬として、必要な時に必要な量の薬を送達することができる製品の開発を目指し、それをぜんそく治療用テープ製剤で実現させることを決意した。
ぜんそくの発作は決まった時間帯、例えば明け方に起きることが多い。その時間帯に最も効果が出るように薬を送達すること(時間治療システム)ができれば患者の方々の生活の質は飛躍的に向上する。
しかしこれを実現するためには、製剤からの薬の放出速度を厳密にコントロールしなければならない。これは、非常に難しい問題だった。

第3章:執念で見つけた薬の量と濃度

薬の放出速度は、使用する粘着剤の種類、粘着剤の厚み、含まれている薬の量や濃度が複雑に影響しあって決定される。
しかも、医薬品用途に使用できる粘着剤は限定され、選択肢は多くない。そうなると必然的に薬の量や濃度によって放出速度をコントロールしなければならない。
画期的な解決方法などはなく、とにかくいろいろな組み合わせのサンプルを作製し、何度も何度も試行錯誤を繰り返した。今でこそコンピュータを用いたシミュレーションは一部可能となったが、当時はそんな便利なものはない。あきらめずに、どんな可能性も見逃さずに、組み合わせを試していった。
粘り強い試行錯誤の結果、ついに結晶状態の薬と溶けた状態の薬を粘着剤中に、ある一定割合で存在させることで、目的を達成できることを見出した。まさに製品開発に対する執念が実った結果であった。この技術はNittoのオリジナル技術としてその後の粘着テープ製剤の開発に活かされている。
さらに、この執念によって生まれた成果を活かし、具体的に製品化を可能にした、高度なプロセス技術の存在も見逃すことはできない。
この粘着テープ製剤の粘着剤層は厚さ20μm(0.02 mm)で構成されている。医薬品であるため品質のばらつきは許されず、製造時において粘着剤層は±2μm(0.002 mm)の精度でコントロールされている。
まさに医療用粘着剤の精密塗布技術がこの製品を支えていると言っても過言ではない。

何度も繰り返し行われた実験風景

第4章:やってみて、初めてわかる

目的を実現させるために大切なことは、よく考え、思い付いたことを実行に移すこと、またこれを何度も繰り返すことである。基本的に「ものづくり」とは汗を流し、手を汚して行う泥臭い仕事であり、決してスマートなものではない。またそうであるからこそ完成した時の喜びはひとしおである。
途中で壁にぶつかることもあるが、迷った時はとにかく自分の手でいろいろなことをやってみることである。机上では何も解決しない。
「世界初の製品」であっても、必ずしも、画期的なアイデアで突然生まれてくるわけではない。「ホクナリン®テープ」の開発は、「やってみないとわからない」という気持ちを常に持ち続けることが大切であることを、開発者たちに改めて教えてくれている。

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